Logistics Story for Industry 産業を運ぶLogistics Story for Industry 産業を運ぶ

国境を越えて。
産業の鼓動を、動かし続けろ。

街を走る乗用車。鮮やかな走りを誇るスポーツタイプから、家族と楽しむファミリーカー。アウトドア派に人気のSUVなど、自動車は人々を魅了し、この国の最も大きな産業として進化してきた。そんな自動車産業におけるモノづくりは、世界に点在する協力メーカーや工場から届くパーツを組み立て完成車として送り出す、まさに国境を越えたスケールで行われている。自動車産業こそ、まさにグローバリズムを代表するような産業の一つなのだ。この国の、世界の経済を力強く回し続ける産業。それを支えるのが、私たち国際物流の役割だ。ここでは壮大なサプライチェーンの最前線で働くスタッフのストーリーを紹介する。

Case_1

北米から日本へ。
自動車部品を至急輸送せよ。
海上から航空へ。
失った時間をどう取り戻すか。

「自動車部品を北米から日本へ緊急輸送してほしい。」航空貨物の輸入営業として日々、奔走する丸山に、そんな一報が入った。詳しく聞くと、もともと海上輸送で1カ月ほどかけて運んだ大量の部品が何らかの影響で錆びてしまい大半が使いものにならない、とのこと。お客様は、国内屈指の自動車メーカー。ここ数年、丸山が新規のお取引をいただくべく足繁く通っていた関係だった。「なんとしても、お力になります。」丸山はそう答えたものの、あまりにも大量の貨物。飛行機に換算しても7機分にも及ぶボリュームだ。海上輸送で運ぶべきモノを航空輸送で運ぶ。さらに、スケジュールの遅れを取り戻すことが目的のため、納期に余裕もない。丸山は、頭を抱えそうになった。
そもそも海上輸送と航空輸送では、強みが異なる。海を越えて運ぶ船舶の輸送は、“輸送時間はかかるものの大量なモノ”の輸送に適しており、航空は“小型で少量、かつ高額なモノ”を素早く運ぶことに適している。自動車部品のように体積も大きく海上輸送が適しているモノを航空で運ぶというのは、異例とも言えるのだ。

輸入営業部 港輸入営業所
丸山 東吾(まるやま とうご)

いつ出荷されるかわからない貨物。
スムーズに運ぶ作戦とは?

丸山は、まず製造拠点がある北米KWEに相談を持ちかけた。北米KWEでも、丸山と共に、このお客様に対する取り組みを行っていただけに事情はすぐに呑み込んでくれた。しかし、現地スタッフはこんな懸念も口にした。「何とかしたいものの、工場からいつ製品が出荷されるかわからないと輸送の手配が難しくなるな。」 部品を再生産するために北米工場はフル稼働。だが、想定外の事態のため確かな生産計画は無いに等しい。話し合う中、北米担当から出てきたアイディアが、工場にトレーラーを留め置きし、製品が満杯になったら出荷する、というものだった。「53フィートコンテナを搭載するトレーラーを工場内に待機させ、製品が満載になり次第陸送する、という発想です。」この提案は、すぐにお客様にも受け入れられた。
こうして工場から搬出された貨物は、最短で航空機に載せ日本へ。納品までにかかる時間を短縮するために 直行便をと考えたのだが、難題はここにもあった。それは航空会社のスペース予約をいつするかという問題だった。安全のため早めにスペースを抑えた場合、もし貨物が集まりきらなかったら空のまま運ぶことになってしまう。かといって、予約が遅れると必要なスペースは確保できない。その板挟みに、丸山らは頭を悩ませた。そこで苦渋の策として選んだのが予約の締切ギリギリの夜22時まで待ち、スペースを確保する方法。だが、必要なスペース分が確保できない日もある。そんな時は、同時間帯に到着する他の便へ切り替える、という交渉も。「毎日が綱渡りのようでした。それでも、必ず運び切る――私も現地も共通の使命感 で動いていました。」丸山はそう振り返る。

お客様とサプライヤーの
架け橋として。

こうした努力もあり、海上貨物を航空で運び切るというプロジェクトは2カ月余りで幕を閉じた。「今回、運んだ部品の量は、完成車が何百台もできるほどの多種多様な部品。それを『こんな短期で運び切れるとは、さすがKWEだね。』とお客様からも評価いただきました。」今回の成功要因を、丸山はこう分析する。「一番は、北米拠点とのタッグです。これはKWE内のチームワークもありますが、北米KWEとお客様の北米工場との絆も大きかったと思います。そして、日本側の連携も欠かせませんでした。」今回は時間との戦いでもあったため、北米工場との具体的なやり取りは北米KWEが担い、その情報を丸山が受け取り、本国サイドに伝え、配送先の調整などを行った。まさに現地、お客様、日本側が三位一体となったことが、スムーズな輸送につながった。 また、丸山が午前中に電話をすれば、現地は夜の遅い時間でも対応してくれるなど、海を越えたタッグも勝因であった。
「欲しいモノを希望通りに運ぶだけでなく、お客様のために何ができるかを考える。それが大事だと思います。時には、お客様に成り代わってパイプ役になることも仕事の一つ。お客様のゴールは、私たちのゴールなので。その目標達成のために、KWEグループ全体で日々試行錯誤を重ね、より良い方法を模索しています。」

産業を影から支える醍醐味。

「工場を止めないためにどうするか――」そうした使命感で奔走した2カ月間。産業のサプライチェーンは、納品がたった1日遅れただけで、数十トンもの部品が生産ラインに間に合わなくなる。そうなると工場はラインを止めざるを得ず、それは何億円もの損失につながってしまう――。
「人々の目には見えませんが、私たちは確実に産業を支えている。そんな実感があります。そして、仕事のもう一つの魅力は、プロジェクトを通して産業の変化や市場のトレンドを肌で掴んでいけることです。」丸山は、そうやりがいを語る。
産業を輸送するということは、企業が存続し、経済や社会の流れを止めないという大きな責任を背負っている。そんな誇りを胸に、丸山は今日もお客様のもとへ足を運び続けている。

profile

大学時代は金融系のゼミに在籍しながらも、異文化や多様な価値観に触れることへの興味から国際物流を志望し、KWEへ。入社後は海上貨物の輸入通関業務を担当した後、海外研修生として、1年間タイへ。帰国後は既存のお客様の貨物手配を行うカスタマーサービスに従事。現在は営業として、自動車部品や電子部品を取り扱うお客様を中心に新規顧客の開拓に取り組んでいる。

Case_2

巨大組織の
通関業務を“一本化”。
本社と現場をつなぐ
パイプ役になる。

入社2年目の松田に告げられたのは、予期せぬアサインメントの打診だった。それは世界有数の自動車部品メーカー。そんな重要顧客をまだ入社間もない松田に任せるというのだ。実は松田は中途入社。国内物流の企業で働く中、国境を越えるようなダイナミックな仕事に関わりたいと、転職してきたばかりだったのだ。「最初は、耳を疑いました。あのグローバルメーカーの担当を私に? チャレンジを後押ししてくれる会社だと聞いていましたが、想像をはるかに超えていました。」
KWEは長年、そのメーカーの国際輸送をサポートしてきた。しかし、通関業務は他社のフォワーダーが担当していた。そのため、通関業務含めてトータルでサポートしたいというのが、KWEとして長期的に追い求めてきた目標だったのだ。その目標を、松田が担当するタイミングで果たすことができ、晴れて通関業務も含めてトータルでお客様をサポートできる状況になったのだった。「KWEなら幅広い視点で業務改革をサポートしてくれそう」というお客様からの期待を背負って担当になった松田。「会社の目標が叶ったところで、私が担当になった。良い流れに乗って、私は通関業務を社内の関係者へとしっかりと引継ぎ、安定したフローへ導けば問題ないと、当初は考えていたのです。」

輸入営業部 千代田輸入営業所
松田 有紗(まつだ ありさ)

効率化を進めたい本社。
従来のやり方を変えたくない事業部。

ところが松田の予想は大きく裏切られた。「このメーカーは、これまでに多くの企業をM&Aにより統合してきた経緯があり、現在は社内に複数の事業部がありました。この事業部が、それぞれ別の動きをしており、それを課題と捉えた本社が、今回の通関業務の一本化を通して、“業務効率化”を図りたいというのがプロジェクトの目的の一つでもありました。しかし実際に蓋を開けてみると部門ごとに通関手続きの進め方はバラバラ。私どもが通関業務を請け負ったとはいえ、内部的には納得がいかない部門も少なくありませんでした。『これまでの業者の方がやりやすい』と口にされる部門も点在していました。」そんな松田がまず手掛けたのは、各事業部へのヒアリングだった。10もの事業部の管理職を訪ね、扱う製品の特徴や取引先の情報、製造拠点などを聞いて回った。「ヒアリングをしてみて、こんなにも製品の特性ややり取りしている取引先が異なるのかと驚きました。これでは、通関実務が事業部ごとに異なっているのも無理はない。その中で、どうすれば“一本化”にメリットを感じてもらえるのだろう?と悩みました。」
これまで各事業部は、慣れ親しんだ通関業者に依頼してきた。そんなこれまでのやり方を変えていく負担の大きさは松田にも想像できた。それでも、松田は現場に足を運び、“一本化”“効率化”のメリットを語った。だが、「ただ手間が増えるだけ」と本音を漏らす部署もある。その時こそ、松田は耳を傾ける。すると、言葉の奥に「業務効率化のその先に、自分たちの仕事がなくなるのでは?」という不安があることに気付いた。松田はその声をお客様の本社内で当プロジェクトを推進する担当者に届け、誤解を解いて回った。松田はすっかり、本社の意思を汲んだパートナーとして、現場と本社をつなぐ存在になっていた。

異なる声を、
一つにまとめて解決策を打ち出す。

松田の地道な努力があって、プロジェクトは少しずつ軌道に乗り始めた。だが、壁はKWEの社内にもあった。「実務に落とし込んでいくと、通関、配送、請求書発行など、社内の多くの部署を動かすことになり、彼らにとって想定外の業務を請け負うことにも。社内にとっても、大きな負担が待っている、という空気感でした。」しかも、各事業部の要望に合わせようとすると、業務はどんどん増えていく。松田はこれらの問題を整理し、社内の関係者と「どうすれば実現できるか」を検討していった。時に、上司から「他の事例でこういうものがあるよ」などとアドバイスをもらいながら、お客様に対して最良な形を提案していったのだ。
一例を挙げると、各事業部によって貨物の仕分け方が異なっていた。部署によっては「品番」であったり、「配送先別」であったりとさまざま。これでは通関時の煩雑さが増し、処理の遅れにもつながってしまう。そこで松田はエクセル関数で仕組みをつくり 、品番や配送先など入力方法が違っても、事業部名がすぐに表示されるよう改善した。お客様への理解促進と共に、社内の負担を増やさずに、現場で迷わず使える実用的なツールまで考えていったのだ。

会話から相手の想いを汲み取り、
流れを変えていく。

お客様の事業部門に飛び込み、背景や想いを知り、少しも逃げることなく丁寧に解きほぐしていった松田。その過程の中でいつしか、お客様の社内での一体感も深まっていった。
「M&Aを重ねて出来上がった組織だけに、お客様自身も、各事業部の考えを全て把握できていたわけではありませんでした。しかし、そこにあえて私たち外部が入ることで、客観的にもなれ、最終的には全体最適を意識していただけるようになったのではないでしょうか。」通関業務の一本化というテーマを通して、お客様の組織の課題解決にも寄与できた松田。後日、クライアントからも「ここまでやれる物流業者ってなかなかないですよね。」とお褒めの言葉をいただいた。
「私自身、フォワーダーって“モノを運ぶ専業者”というイメージを抱いていたので、まさか、お客様の組織の問題にお役に立てるとは思ってもいませんでした。」と言う松田。松田の強みは、人と話すことが好きで、相手の懐にすっと入り込んでいける共感力の高さや想いを汲み取る洞察力だ。
通関は、物流の過程においてごく一部に過ぎない。しかしその背後には、さまざまな関係者がいて、異なる業務フローや思惑がある。「私たちがモノを運ぶ使命の根底には、常に人と人とのつながり、そしてそこに込められた想いがあります。その想いに誠実に向き合うことでビジネスは前へと動き出します。」――松田はこの経験を糧に、さらなる大きな仕事に挑んでいく。

profile

2023年に中途入社。輸入カスタマーサービスとして、オペレーションの取りまとめに従事した後、営業との兼務を経て2024年8月より営業専任に。前職では国内運送会社に5年ほど勤務し、現場での配送や国際輸送の実務を経験。フォワーダーの仕事に魅力を感じ、転職を決意。KWEを選んだ理由は、熱意ある面接対応と国際物流への関心から。現在は千代田輸入営業所にて大手顧客を担当しながら、国内輸送の知見を活かして大型設備の納品・設置案件にも対応する。

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