プロローグ サウジアラビアへの道

夏場は40度以上の日々が続く灼熱の国、そして世界最大の産油国として知られるサウジアラビア。石油国家からハイテク国家へのシフトを目指す国王指導の下、王立研究大学院プロジェクトが始動していた。ジッダから120km北東の漁村に1兆円もの資金をかけて大学院は建設されている。世界的ハイテク分野のリーダー育成を目的とした国家事業にKWEも参加することとなった。これは世界規模での半導体製造装置の輸送・搬入実績が評価されたからだ。
3月から1年間にわたり大学院で使用される研究装置・半導体製造装置(155機種)の輸送・搬入を行うのがKWEの役割である。サウジアラビアに輸送されるのが初めての装置ばかり。我々は、プロジェクトコントロール役のKWE/ベネルクス(本社アムステルダム)とKWE/日本で国際プロジェクトチームを結成し、準備に取り掛かった。

オランダ

3月

KWE / ベネルクス

3月、各種装置の出荷が開始された。
北米・欧州・アジアのメーカーから出荷される装置は時期も形状もバラバラであるため、欧州の物流センターとして機能しているアムステルダムにあるKWE/ベネルクス保管倉庫で一旦集約された。一定の温度と湿度、そして清潔さが装置の保管には求められる。KWE/べネルクスではテクニカルコンサルタントやメーカーエンジニアからの厳しい条件をクリアした倉庫を提供し、装置性能に問題を起こさないよう絶えず配慮し続けた。
集約された装置は大学院の工事進行に合わせて、ジッダ国際空港に順次発送できる体制をとり、準備を整えた。

東京

3月

KWE / 日本

各国からアムステルダムに向けて出荷が始まる。非常に神経を使う装置輸送はいくら経験を積んでも、毎回が真剣勝負のために緊張する。うまくいって当たり前。その当たり前を実現するには綿密な計画と準備、そして緊急時には状況に合わせた代替案を数パターン提供できる解決力が求められる。特に綱渡りのような厳しいスケジュールの下では、時差や場所など関係なく、リアルタイムでの情報共有や、熱いやり取りが続く。自分の責務を全うする姿勢こそがKWEのDNAだ。アムステルダムへの集約が終了する10月まで緊張が緩む日はなかった。

サウジアラビア

7月

日本・オランダプロジェクトチーム

大学院研究施設のクリーンルーム(*)搬入用の半導体製造装置が完成し、いよいよ搬入部隊がサウジアラビアに入るときが来た。この装置はナノテクノロジー研究所に設置される装置で、大学院の数ある研究部門の中でもっとも注目される分野だ。数週間前に日本から搬入に必要な特殊機材を輸送し、技能をもったスペシャリストチームがついにサウジアラビアに到着。大学院では技術コンサルタントやクリーンルーム設計エンジニアと綿密な打合せを行い、KWE/ベネルクスは搬入スケジュールに沿ってアムステルダムからジッダ国際空港に装置の輸送を開始する。ついに作業が始まる、とメンバーは興奮した。
※空気清浄度が一定レベルに確保された部屋のこと

しかし、実際始まると全く思うように作業が進まない。KWEチームにはグローバルスタンダードがあるためそれに基づいた手順を重要視する。だが、サウジアラビアでは今まで見たことも聞いたこともない装置や搬入先のクリーンルームを前に、現地関係者は何をどうすればよいのか状況が分かっていないのだ。さらに文化の深い溝がある。

イスラム文化の奥深さは語るまでもないが、KWEチームはイスラム文化にまだ慣れておらず、考え方や行動様式が驚きの連続であった。1日5回のお祈りやラマダン(断食月)、ハッジ(聖地巡礼)など言葉は知っていても、実際に経験するとその規模や厳格さに畏敬の念を覚えた。その反面、従来は大変敬虔な意味である「インシャラー」(神の思し召しのままに)が「何とかなるだろう」と意訳されて使われる場面に何度も遭遇した。我々が緊張で焦っている時にこの言葉をきくと、「またか・・・」とぐったりしてしまうこともあった。
文化の違いに葛藤の日々は続くが「なるようにしかならない」と思い至ったときに、文化の違いを受け入れる余裕がでてきた。作業開始から2ヵ月後、メンバー全員がイスラム文化に慣れてしまい、日本にいるような感覚で作業を行うようになっていた。

サウジアラビア

翌年3月

日本・オランダプロジェクトチーム

搬入作業開始から9ヵ月後の翌年3月、最後の装置の搬入が終了し撤収作業に入った。作業期間中には50度近いジッダ空港貨物地区の駐機場で到着が遅れた貨物便をひたすら待つことや、建設上の問題でクリーンルームに搬入できないサイズの装置をメーカーのエンジニアと分解するなど、非日常が日常という日々を過ごした。
大学院内でのKWEの評価は非常に高く「KWEが来れば奇跡が起こる!」とまで表現する関係者もおり、その言葉をありがたく受け取った。だが我々にとっては最高のパフォーマンスを世界の何処ででも提供することが当然のことであり、その責務を果たしたに過ぎない。

日本から持ち込んだ機材を海上コンテナに詰め込み、そのドアを閉めたときに全ての作業が終了しプロジェクトは成功したと初めて実感できた。

KWE作業内容
  • (1)半導体製造装置・研究機器の搬入
  • (2)装置の一部組み上げ・位置調整
  • (3)各メーカーエンジニア補助作業
  • (4)ジッダ空港でのULD解体・車両積込補助
  • (5)パーツ在庫管理
  • (6)クリーンルーム設営メーカー機材の移設
  • (7)重機手配
  • (8)各メーカーエンジニアの大学院内入場準備
  • 搬入横もち
    搬入横もち
  • Clean up
    Clean up
  • クリーンルーム内搬入
    クリーンルーム内搬入
  • クリーンルーム内設置
    クリーンルーム内設置

エピローグ

プロジェクト終了後の秋

KWE / 日本

プロジェクトチームのメンバーは通常業務に戻り、現在は各自の仕事を行っている。時折、サウジアラビアの話になると「砂漠が懐かしい」との話題が出てくる。プロジェクトは次の工程に入っており、KWEも参加する予定だ。
次にサウジアラビアに向かった際には何が起こるのか予想は難しい。だからこそ、我々の現場力が問題解決に大きく貢献できると言える。

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